失いたくないもの

11/13
前へ
/40ページ
次へ
「…啓太くん、どうし…」 言いかけた杏子さんを そのままぎゅっと抱きしめた。 「杏子さん… 俺…杏子さんが好きだ。 杏子さんも悠斗も… 誰にも渡したくない」 「……………」 「もう…大切な人を 失いたくないんだ。 杏子さんが旦那さんを 思い続けるその気持ちも… 丸ごと全部受け止めるから。 …だから… そばにいてもいい?」 抱きしめたまま言った俺に 杏子さんはクスっと笑った。 「…お鍋…出来てるよ? 一緒に食べよう」 杏子さんの手が そっと俺の背中に回って 作業服をぎゅっと掴む。 「杏子さん…」 正面に顔を戻して見つめた 杏子さんの瞳は 涙でいっぱいだった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1218人が本棚に入れています
本棚に追加