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「昨日のドラマさー、重くなかった?」
「思った。なんのために生きてるかなんて、考えるだけで重い」
翌日、学校では朝のHRが終わり、私は1時間目の授業の準備をしていた。
どこからか聞こえてきた女子の会話は、昨日佐々さんの家で見たドラマのことかな。
「なんのために生きてるかなんて、そんなの、恋愛すればすぐに見つかるっす」
教科書の角を揃えていた私は、頭上から降ってきた言葉に顔をあげる。
白雪さんが立っていた。
「ね?」
「うーん……」
「えー。人生楽しくなるよー? 好きな人の為に生きたいって想えるよ?」
なぜか自信満々に歯を見せて笑う白雪さんに、私は苦笑いを返す。
「そんな簡単に理由が見つかるなら、誰も苦労しないと思うけどな……」
「いやっ、恋愛は簡単じゃないっす!」
白雪さんのこの言葉には、やけに感情がこもっている気がした。
「もしかして経験談?」
「ううん」
ケロッとした顔で言うもんだから、私の右肩が下がる。
このことについてはもっと話がしたかったんだけど、白雪さんの肩越しに教室に入ってくる先生の姿が見えた。
「白雪さん、先生」
「え、早くないっすか?」
まだ話し足りないー、と言いながら席に戻る白雪さん。
教室のあちこちで聞こえていた話し声も聞こえなくなると、学級委員の号令で授業が始まる。
2年になった時、白雪さんと喋るといっても、休み時間毎に話をしていたわけじゃない。
でも今は、一緒にいる時間も長くなった。
……良いこと、なのかな。
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