紫陽花ナミダ(後編)

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  「昨日のドラマさー、重くなかった?」 「思った。なんのために生きてるかなんて、考えるだけで重い」 翌日、学校では朝のHRが終わり、私は1時間目の授業の準備をしていた。 どこからか聞こえてきた女子の会話は、昨日佐々さんの家で見たドラマのことかな。 「なんのために生きてるかなんて、そんなの、恋愛すればすぐに見つかるっす」 教科書の角を揃えていた私は、頭上から降ってきた言葉に顔をあげる。 白雪さんが立っていた。 「ね?」 「うーん……」 「えー。人生楽しくなるよー? 好きな人の為に生きたいって想えるよ?」 なぜか自信満々に歯を見せて笑う白雪さんに、私は苦笑いを返す。 「そんな簡単に理由が見つかるなら、誰も苦労しないと思うけどな……」 「いやっ、恋愛は簡単じゃないっす!」 白雪さんのこの言葉には、やけに感情がこもっている気がした。 「もしかして経験談?」 「ううん」 ケロッとした顔で言うもんだから、私の右肩が下がる。 このことについてはもっと話がしたかったんだけど、白雪さんの肩越しに教室に入ってくる先生の姿が見えた。 「白雪さん、先生」 「え、早くないっすか?」 まだ話し足りないー、と言いながら席に戻る白雪さん。 教室のあちこちで聞こえていた話し声も聞こえなくなると、学級委員の号令で授業が始まる。 2年になった時、白雪さんと喋るといっても、休み時間毎に話をしていたわけじゃない。 でも今は、一緒にいる時間も長くなった。 ……良いこと、なのかな。
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