128人が本棚に入れています
本棚に追加
「えー、今日は前回の続きから読んでもらう――」
教科書を広げながら先生の声に耳を傾ける。
大学に行くとなると、悠長に窓の外を見ているわけにはいかない。
名の知れた大学を目指しているわけでもないし、今からでも遅くはない。
……と、信じたい。
「2行目から大内、読んでくれ」
「はい」
今日は金曜日。
夜には雨が激しく降ると予想されているぶん、午前中にも関わらず、灰色の雲に覆われた街は真っ暗だ。
雲の上では雷が鳴ってる。
時々遠くの空で光るのが気になって、言ったそばから窓の外を見ていた。
急に、なんとも言えない不安が押し寄せ、胸がざわついた。
なんだろう……、と前に視線を戻せば先生と目が合ってしまう。
「次、野々原」
「はい……」
後ろの子に何行目を読めばいいのか教えてもらうと、雷の音を耳にしながら教科書の内容を読み上げた。
最初のコメントを投稿しよう!