オレンジ(前編)

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  「え。どうしたんすか、それ」 学校の正門で会った白雪さんが、私の顔を見るなり驚いた顔で聞いてくる。 内出血で腫れていた頬は、今は腫れも引いていた。 でも擦り傷はすぐに治らなくて、それを見た白雪さんが凄く心配してくれる。 「大丈夫っすかっ?」 「うん」 もうすぐ定期検診でおばさんに会うから、それまでにはなんとか治って欲しいんだけどな……。 「もしかして、柴田さん?」 「え?」 いつも笑ってる白雪さんが、見たこともない険しい顔をしてその名前を出した。 慌てて手をつけて否定する。 「あ、違う。これは猫に引っ掛かれて」 「猫、すか? 沙彩ちゃん、猫飼ってるの?」 「ううん、野良猫」 傷口を隠すように手で触れて、私は笑みを浮かべる。 「野良猫ぉ?」 なんだそんなことかと白雪さんがオーバーに肩の力を抜くと、ツインテールも一緒に揺れる。 「心配した」 やっと笑ってくれる白雪さんだったけど、それでもまだ、その目はどこか疑っているようにも見える。 「ほら、土日挟んでたし。昨日まで学校休んでたから、柴田さんと顔を合わせることもなかったからね」 だから柴田さんじゃないよ、と私は必死に弁解する。 「まぁ、そうっすね」 「うん」 「私もね、猫に引っ掛かれたことある。痛いんすよねぇ、地味に」 「うん。お風呂入るときとかね」
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