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「え。どうしたんすか、それ」
学校の正門で会った白雪さんが、私の顔を見るなり驚いた顔で聞いてくる。
内出血で腫れていた頬は、今は腫れも引いていた。
でも擦り傷はすぐに治らなくて、それを見た白雪さんが凄く心配してくれる。
「大丈夫っすかっ?」
「うん」
もうすぐ定期検診でおばさんに会うから、それまでにはなんとか治って欲しいんだけどな……。
「もしかして、柴田さん?」
「え?」
いつも笑ってる白雪さんが、見たこともない険しい顔をしてその名前を出した。
慌てて手をつけて否定する。
「あ、違う。これは猫に引っ掛かれて」
「猫、すか? 沙彩ちゃん、猫飼ってるの?」
「ううん、野良猫」
傷口を隠すように手で触れて、私は笑みを浮かべる。
「野良猫ぉ?」
なんだそんなことかと白雪さんがオーバーに肩の力を抜くと、ツインテールも一緒に揺れる。
「心配した」
やっと笑ってくれる白雪さんだったけど、それでもまだ、その目はどこか疑っているようにも見える。
「ほら、土日挟んでたし。昨日まで学校休んでたから、柴田さんと顔を合わせることもなかったからね」
だから柴田さんじゃないよ、と私は必死に弁解する。
「まぁ、そうっすね」
「うん」
「私もね、猫に引っ掛かれたことある。痛いんすよねぇ、地味に」
「うん。お風呂入るときとかね」
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