第1章  特別な人

22/29
前へ
/56ページ
次へ
「このへんかな?」 「あ、そこの家です。ありがとうございます。」 モ-リは、 アッキ-を車で家まで送っておろした。 あたしは、アッキ-に手を振りながら、 まだ車内の残る自分に違和感を感じていた。 「ねえ、モ-リはあたしを好きじゃないんだよね。」 「え? 好きだけど。」 「だから、そういう好きじゃなくて、男と女っていうかそういう。」 「好きだよ。だから一緒に居るんでしょ。」 「あたしは、好きじゃないよ。」 「知ってる。」 「それなのに、いいの?」 「嫌いじゃないでしょ。」 「嫌いじゃない。」 「好きになってくれるかもしれないじゃない。」 「ならないかもしれないよ。」 ハハッとモーリは笑って車を停車させて振り返った。 「何?」 「隣においでよいちご。  そこじゃあ話が遠くて淋しいから。」 「え、でも、…」 「おいで。」 助手席を軽く叩いてウィンクをする。 「!」 どきんっ きゃあ~~もうどうしようっ 固まって動けなくなった私を面白そうにしばらく見つめて、 何も言わずに車を発進させた。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加