砕かれた水晶

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「お母さんと舞は昼から公園に行くんだけど、たかしも来る?」 「いや、今日は友達の家に遊びに行くんだ」  お気に入りの青いジャンバーに腕を通す 「そう……たしか勇一君だっけ。すっかり仲良くなったわね。それじゃ、今日は二人で行くかな。お昼はどうするの?」  チャックを胸の所まで上げる 「友達のお母さんが作ってくれるって言ってたよ」  奥では父がソファーに寝っ転がりテレビを見ている。仕事でくたくたのようで、最近の日曜日はいっつもこんな感じだ。そばでは妹の舞が絵本を読んでいる。 「それは申し訳ないわね。ちゃんとお礼を言っておくのよ」 「分かった。五時には帰ってくるから」  妹がこちらを見てきた。腰まで届く髪が揺れる。 「お兄ちゃんいってらっしゃーい」 「うん。いってきまーす」  外に出ると、冷たいがほおに当たり、向かいの家の木の葉っぱが少し赤くなってきた。すっかり夏は終わってしまったようだ。  家を出て左に少し歩くと、困った顔で辺りを見回している男の人がいた。 「お兄さん、どうしたの?」 「いやー、迷子でね」  男は苦笑いしてこちらを振り返ると、口を半開きにしたまま僕を見つめた。 「たかし……くんじゃん。ひさしぶりだね」 「えっ」 「おじさん誰だっけ?」  男の人は大きなため息をついた。 「やっぱり忘れているか……。俺はこれから公園に行きたいんだけど、案内してもらっても良いかな?」 「友達との約束があるから……。向こうに交番があるから、そこで聞いてみて」 「そうか、ありがとう。また今度、違う形で会おうな」  そう言って、男の人は去っていった。さて急がないと。郵便局を右に曲がれば勇一の家だ。
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