砕かれた水晶

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「ただいまー」  家に入るが、テレビの音声以外は何も聞こえない。ソファーには父が横に寝っ転がっていた。やっぱり一日中ゴロゴロしていたようだ。母と妹の姿は見つからない。まだ帰ってきていないのか。急いで家に戻ってきたからお腹が空いた。  夜遅くなっても二人は戻ってこない。父が代わりにシチューを作ってくれた。しょっぱくて美味しくなかった。  夜十時。チャイムの音が鳴った。急いで玄関まで行くと、若い警察官が立っていた。 「奥様とお嬢様と思われる遺体が発見されました。確認のためご同行お願いします」  父の声がすぐ後ろから聞こえる。 「そうですか。分かりました」  言葉は淡々としていたが、父の目は光を失っていた。  父と警察官は遺体の確認で出て行った。僕はベッドにうずくまって震えていた。もしかしたら、死体は別の人で、二人はまだ公園で遊んでるのかもしれない。でも帰る時、公園にはすでに警察がいた。ってことはその時にはもう……いや、帰り道で迷子になってるだけだ。朝も迷子になってる男の人がいたし。あれ? あの人って公園に行くって言ってたような。  
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