砕かれた水晶

9/11
前へ
/11ページ
次へ
 ガチャン。玄関のドアが開いた。部屋に戻ってきた父に問い詰める。 「ねえ、お母さんと舞は?」 「……死んだ」 「嘘だ! ……まだ家に帰ってきないだけだ」 「そうだと良かったな」 「僕、二人を探しに行ってくる」 玄関に行こうとする僕の肩を父の手が掴む。 「いい加減に目を覚ませ、たかし! 現実を見ろ! 二人は死んだ……もういないんだ」  膝に力が入らなくなり、僕はその場に座り込んだ 「嫌だ……また、お母さんの作ったご飯が食べたい」  父は自分の部屋に行ってしまった。  床には涙が溜まり、嗚咽が家族との思い出を吐き出した。サッカーをしたり、キャッチボールをしたり、バーベキューをしたり、思い出の中の二人は不気味な位に生き生きとしていた。  いつしか、涙は止まった。眠くはないが、とても疲れた。自分の部屋に行こうとすると、父の部屋から話し声が聞こえた。ドアに耳を当てる。 「舞……すまなかった。馬鹿なパパを許してくれ……」 「お父さん?」 「たかし、聞いてたのか」 「大丈夫お父さん?」 「たかし、知ってるか? 死んだ家族は天国でまた一緒になれるんだってさ。嫌なことも全部忘れて、永遠に……幸せにな」  嫌な予感がした。ドアノブに飛びつき夢中でガチャガチャと回した。だがドアは内側から鍵がかけられていて開かない。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加