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扉を開ける。するとそこは、ひどく殺風景な部屋だ。
八畳程の広さのその部屋には、ベッドを含め、片手で数えられるほどの家具しか置かれていない。
扉の反対側にある窓の傍に置かれたベッドの上に、一人の少女がいた。
窓の向こうへ視線を向けている為、顔は見えない。
長く艶やかな黒髪は腰まで伸び、露出している肌は、驚くほど白い。
記憶の中の少女と比べると、ほんのわずかに日焼けしている。…一般的な観点からすれば、それでも白すぎるけど。
扉を閉め、一歩踏み出す。すると、少女がこちらへ振り向いた。
わずかに茶色がかった黒く穏やかな瞳。整った顔立ち。わりと起伏に富んだ身体。
そして、感情をまったく感じられない、無表情。
それが俺の前にいる少女、神代 霞(カミシロ カスミ)だ。
俺にとって一番大切な、大切な妹。
そんな彼女に向け、俺は呟いた。
「ただいま、霞」
「…おかえり、きりと」
彼女はそう、呟いた。
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