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その時、家の古い門が来客を告げた。
「ん?誰か来たみたいだな」
「…うん」
霞の部屋の窓は門の反対側な為、来客が誰かは分からない。
今、すぐに応対できるのは勇厳さんだけなんだけど…、あの顔だからなぁ…。
初対面の人の八割は逃げ帰る迫力を持っているのに、勇厳さんはあんまり自覚していない。
…なんか、不安だ。
「俺、ちょっと様子見てくる」
そう霞に告げると、
「…わたしもいく」
と返してきた。
「ん、じゃあ行くか」
「…うん」
言って、霞はベッドから降りて立ち上がる。わりと小柄な霞は、俺の胸辺りまでしか身長がない。
扉を開け、一階に降りる。
そのまま廊下を進み突き当たった左の部屋が、茶の間兼応接間だ。玄関から見れば入ってすぐ右。
どうやら来客は逃走する事なく家に上がった様で、見慣れない靴が玄関にあった。
「…はるか」
唐突に、霞が口を開いた。…いや、タイミング的にはバッチリだったけど。
「ん、そうか」
茶の間に入ろうとした所で、中から声が聞こえてきた。
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