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「それに、奥さんもいた」
ドラマみたいだよね、とふっと息を吐きながら言う。
「そんな……」
「知らなかったから、事実を知った時は裏切られた気持ちでいっぱいになった。けどすぐに思ったよ。最初から何も始まってなかったなって。そしたら妙に……寂しくなった」
そこで気付いたんだっけ。
もしかすると私は金曜という存在だけでなく、彼のことを特別に想っていたんだと。
「あ、それで……」
視界の端で、小さく呟く白雪さんの表情が変わる。
多分白雪さんの頭の中で、今話した内容と私が学校で泣いてしまった時のことが繋がったんだと思う。
それが、彼女の表情から伝わってくるから。
「その時にね、佐々さんが……付き合ってみようって」
「あぁ、だから……。ふむ、佐々さんは沙彩ちゃんのこと好きになったのかな?」
「え?」
予想してなかった言葉に、私はまた息を吐きながら笑った。
「それはない」
「なんで言い切れるんすかぁ」
……これは、多分の話だけど。
きっと、佐々さんには大切な人がいる。
それがどのくらいの重さなのかは分からないけれど、そう思った理由があった。
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