ソーダ水(前編)

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外に出ると、夜風が生暖かかった。 「あ。佐々さん、靴紐が」 「……あぁ、面倒だからいいよ」 「駄目ですよ、危ないです」 そう言って佐々さんの足元にしゃがむと、ほどけた靴紐を結んであげる。 「立ち止まってる時はいいですけど、歩き出して転んじゃわないように、ちゃんと結ばないと」 「……」 最後はキュッと蝶々結びをして、佐々さんの顔を見上げる。 すると、いつも眠たげな目をしている彼が、今は数ミリ瞼を上げて、私の顔を凝視する。 「はい、いいですよ?」 「……ありがとう。でも、おたくも人のこと言えない」 「え?」 佐々さんの手が胸元に伸びてきてドキリとする。 トン、と人差し指でスカーフを指されると、私は結び目が緩んでいることに気が付く。 鍵を掛ける彼の横でスカーフをほどいて、こちらもきつく結び直した。 「行こうか」 「はい」  
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