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「ならさ、そうじゃないならなんで――」
恋愛感情もないのに付き合うようになった理由があるわけで、案の定白雪さんに聞かれる。
「うん……」
笑って、曖昧にすることも考えた。
私の中で病気のことは、もう随分昔のことのように思ってる。
だけどこの話は、まだ最近のことで。
酷くえぐられた傷口も治りきってないのに、話をしてまた泣いてしまうんじゃないかと、そればかりが不安だった。
……でも、付き合ってることをカミングアウトした時点で、経緯を聞かれることくらい分かっていた筈。
「沙彩ちゃん?」
図書館の一角。
こんな静かな場所では、自分の声は良く通る。
話を始めてしまえばもう、言葉を濁してご想像にお任せします、なんて出来ない。
「……白雪さんは今、楽しい?」
「今っすか? はぁ、そりゃ沙彩ちゃんと初めて外で会って話が出来てるんすから、楽しいよ」
白雪さんは恥ずかし気もなく答えた。
自分の気持ちを素直に相手に伝えられる人だ。
……私とは違う。
でも今なら、彼女なら、私の下手な話もちゃんと聞いてくれる気がした。
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