ソーダ水(前編)

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「私、ずっと分からなかった。自分が今、何を思いながら生きてるのかとか。分からなくて……」 そんな時に出会った人。 いつの間にか特別になった、金曜日。 「私、周りからすればもう大人でしょう? けど、考え方も振る舞いも全然子供のまんまで。子供の頃は、ほっぽってたら大人になれるんだと思ってた。でも……全然なれやしなかった」 「そか……。思ってもなかったっすよ、沙彩ちゃんがそんな風に考えてたなんて」 「うん……」 自分が嫌いで、病院から見える煌めいた世界も、いざそこへ立ってみれば難しい問題ばかりでつまらなかった。 「そんな時に出会った人がいてね。もうずっと年上の人……私に好意を抱いてくれてた」 でもそれは、嘘だと思った。 偽物だと思ってた。 「何度も過ごした彼との夜が、いつの間にか必要なモノになってたんだと思う」 「……なんでその人とは別れちゃったんすか?」 恐る恐る聞いてきた白雪さんの問いに、私は首を横に振る。 「そもそも付き合ってなかったから」 「えっ。マジっすか」
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