ソーダ水(前編)

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私は佐々さんの言葉を思い出す。 “交際している人間がいたら、自宅に異性をあげるなんてこと僕はしない” 佐々さんが嘘をついているとは思えない。 嘘をついたところで利益も何もないし。 でも、大事に想っている人なら……。 リビングにある写真立てがそう思わせた。 もしかしたら、写真なんて入ってないかもしれない。 考えすぎかもしれないけど、私が二次災害を起こさぬよう誰かが用意してくれた物だ。 ――なら、伏せられた写真立てを見つけていなかったら、彼のことを好きになったかもしれない? ううん、写真立てが無くても……。 だって佐々さん、たまに凄く冷たい表情をする。 私の思い過ごしならそれでいいんだけど、佐々さんもまた、何かを抱えているんじゃないか。 「自信あるよ。私と佐々さんはかっこ仮の関係だから」 「……当事者が言うならそうなんすかね」 そっかぁ、と何度も繰り返す白雪さんは、おもむろに携帯を開く。 「あ……電話なら外に出たほうがいいかも」 「ヒヒ、違うっす。ちょっと見せたいものが――」 そう言いながら白雪さんは、携帯の画面をこちらに向けてくる。 「小説……?」 画面には、白雪さんが書いている小説の表紙が映っていた。
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