153人が本棚に入れています
本棚に追加
「家の空気が重くても、私が笑って2人の仲を繋いでいられるなら、いつも笑っていようって思ったんす」
そう、クッションに頭を乗せて白雪さんがポツリポツリと話す。
「でももう、それも必要なくなったんすけど」
「……」
考えてみた。
白雪さんは、自分の書く小説は自分の憧れだと言う。
私はあの小説を読んで、白雪さんは幸せだから、毎日が楽しいから、いつも笑ってられるんだろうなって思った。
けど違うんだ。
……違ったんだ。
誤解をしていたことで、白雪さんに謝りたくなる。
「でねっ?」
「う、うん」
急に勢いよく顔を上げた白雪さんに、とにかく今は話を聞こうと私は前のめりになる。
「離婚が決まっても、最後まで笑顔でいようって笑ってた私に、お父さんなんて言ったと思う?」
「なんて言われたの?」
「なんでお前はいつもヘラヘラしてるんだ、って言ったんすよっ?」
「えぇ、そんな……」
「少しは悲しんだりしないのか、寂しいと思わないのか、って。それ言われた瞬間、もーお、腹が立ってね」
「うん……」
「自分が出ていくっていうのに、笑ってる私を見てそう思ったらしいんすけど」
さっきからクッションを叩いていた白雪さんの手が、最後にポスンと静かに落ちる。
「私のやり方……間違ってたみたいっすね」
「……」
「泣いて、喧嘩なんかしないでって言えてれば、それこそ2人を繋いでられたかな」
床を見つめながら、悲しげな表情をする白雪さん。
こんな弱々しい彼女を見るのは、初めて。
最初のコメントを投稿しよう!