ソーダ水(前編)

7/40
前へ
/40ページ
次へ
佐々さんと付き合うようになって、1ヶ月。 変わらず私は図書館に行くし、こうして佐々さんの家に来ることもある。 変わったことといえば、ここに来る理由が“雨に濡れたため”ではなくなったのと。 佐々さんが前に冗談で言った“野々原さん用のジャージ”が今はあること。 といっても、佐々さんに借りていたジャージを貰っただけなんだけど。 最初に比べると、彼女っていう実感はある。 時々、日を跨いで帰ることが増えたのもあるし―― 「はい貧血で、って。聞いてないけど」 「? はい、言ってなかったです」 「いやいや……言いなさいよ」 「え?」 「え、じゃなくて。何も知らずにいるとこだったじゃない」 「……」 「なに?」 「や……今佐々さん、どんな気持ちでいるのかと」 一瞬、あなたに言ってどうするの?って思ったから。 「いくらかっこ仮でも、この1ヶ月はおたくのこと自分の彼女として見てきたわけだし。それ以前の付き合いもあるんだから、そら心配するでしょ……。 倒れたって聞いて気を揉むくらいの感情はあるよ」 「……それは、どうも」 ……ほら。こうやってたまに、大事にされてるって意味で優しさを感じる。 少しずつだけど、確実に。 今、この人の存在に助けられてるなって想うことがあるから……危ない。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加