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「あんたたち、そこの高校の生徒さん達かい?」
「はい、いままで剣道の練習でした」
「ほう、最近は女生徒も長刀(なぎなた)ではなくて剣道を習うのかい?」
「わたしはまだ始めたばかりだから、その辺の事情はよく分かりませんが…」
「おばさん、晶子さんはね女子剣道部員のホープなんですよ。今度の都剣道大会では個人戦にうちの高校を代表して出場することになっているんですよ」
一樹がポットを取って、晶子や朋美の湯飲み茶わんにお茶を注ぎ足しながら言った。
「ほう、都剣道大会かね、そうかい、そうかい、この竹虎も応援するよ」
「ところで、竹虎さん、これは何ですか?」
晶子が座っている席の近くにある籠いっぱいの小さなネットに詰まったガラス細工を手にしながら尋ねた。
「ああ、それはおはじきだよ。小さいのや大きいのがあるだろう。昔は女の子の遊び道具の定番だったんだけどね。こうやって、これは何かと聞いてくる女の子もいるという時代になったんだね」
「これ、きれいだから大きい方をひとつください」
晶子はそう言うと、デカおはじきの詰まったネットをひとつ上着のポケットに入れて代金を竹虎に手渡した。
二日後の朝、教室で晶子の前の席に座る朋美が横座りして晶子に一枚の招待状を見せた。その日の夕方に催されるパーティーへのホルスタイン王国大使館からの招待状だった。
「晶子、部活が二日制にもどったから、今日は早く帰れるでしょう。それで、このパーティーに一緒に出てくれないかな」
「ホルスタイン王国ってどこにあるの?」
「沖縄の島嶼(とうしょ)サミットにも参加してた東南アジアの島国のひとつなの。ただ、ここは二年ほど前から石油が輸出できるようになって経済的に注目を浴びてるのよ」
「招待状は朋美に来たの?」
「これはうちの両親に来たんだけど、いまうちにいないでしょう。それで、昨日の夜、母に電話してたら、大事な取引先なのでわたしに代理で出てくれって言いだしたのよ。それに同伴で来てくれって招待状にあるから、翔に頼んだんだけど都合が悪くて…」
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