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「それで、わたしと同伴ってことを考えたわけね。でも、何のパーティーなの?」
「それが、非公式でこの国のイザベラ王女が来日中でその披露パーティーということなの。それに、この王女はわたしと同じ十七歳なのよ。それなのに、次の女王様に決まっているそうなの。だから、うちの両親がどうしても出席しろって聞かないのよ」
「わかったわ。わたし行くから、大丈夫」
「ところで、さっきからひとりで何をやってるの?ひとの顔も見ないで」
「あっつ、これね。この前の竹虎で買ったおはじきよ。こうやって互いにぶつけ合うだけでなんか面白いの。変ね」
「ふーん。ひとつひとつがきれいな大粒のガラス玉なのね。でもこのデカいおはじきをぶつけると当たった人は痛いでしょうね。ハッハハ」
その日の夕方、晶子と朋美は朋美の邸宅でイブニングドレスに着がえたあと、家政婦の中島君絵が呼んだハイヤーで赤坂のホルスタイン王国大使館へ向かった。大使館前に到着して赤いカーペットが敷かれた広い玄関を入ると大使館職員が招待状のチェックを行っていた。
そこを過ぎると、大広間に通された。非公式の日本訪問ということで、内輪の立食パーティーと朋美が言っていたが、正装した二百人ほどの招待客がすでに大広間に集まって談笑していた。晶子と朋美もボーイから飲み物を手渡されて招待客の間に交じって、開会を待った。部屋の左右の壁側には豪華な料理がずらりと並べられ、開け放たれた中庭ではバーベキューをコックたちが準備していた。
「すごく盛況ね、朋美」
「やっぱり、石油リッチの国だからね。招待客も食事も半端じゃないわね」
「あら、朋美、あそこの中庭にいるお婆さんに見覚えがない?」
「えっ。あーっ。あの大学いものお婆さんじゃないの。なんでここにいるの?」
確かに、中庭のバーベキューを焼くコックたちにいろいろ注文をつけているのは派手なイブニングドレスを着た竹虎のお婆さんだった。
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