カレンダー(前編)

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「はい、大体は」 「そ。僕一眠りするから、後で起こしてくれる? 腹減ってるなら冷蔵庫にあるもの何でも食べていいし」 「……」 「ふぁ……エアコンとタオルケットって、最高の相性だよ」 どうやらこの人には、間接的な言い方では伝わらないみたい。 「あの……冷房切ってもいいですか?」 「だめ」 すぐさま返される返事に、私は腰をあげてリモコンを取ると、テーブルの周りを回って佐々さんの側に立つ。 「室内温度見て下さい。せめて下げませんか?」 目を細めてリモコン画面を見つめる佐々さんは、 「休みの日くらいいいでしょ……」 と、タオルケットに潜り込む。 まるで、顔を甲羅に引っ込めるカメみたいだ。 「図書館だって涼しいじゃないですか」 「動いてるとそうでもないんです」 「……」 夏だというのに、私の手は指先まで冷たくなっている。 目を閉じる佐々さんを見下ろすと、私は思いきってタオルケットに手を掛けた。
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