カレンダー(前編)

4/32
前へ
/39ページ
次へ
「ちょっと」 剥ぎ取ったソレを畳んでソファーに置く。 「……遠慮が無くなってきたよね、おたく」 最初は目も合わせられなかった人が、と佐々さんは渋々体を起こす。 遠慮が無くなってきてる? ……うん。今では食事に呼ばれても“お構い無く”なんて言わなくなったし。 「すみません……」 と、体の前で手を組んで謝る。 佐々さんは視線を斜め上にあげて、私を見た。 「いいよ」 でも、と言葉を続ける彼はソファーの上に手を伸ばすと、 「タオルケットは返して」 「あ」 ソファーにもたれて、また、タオルケットにくるまってしまった。 「少し寒いんです……」 私が言うと、佐々さんは無言で見上げてくる。 「なら、野々原さんも入れば」 「え?」 タオルケットから手が伸びてきて、私の腕を掴んだかと思えばグッと体ごと引っ張られる。 わわっ――。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加