ソーダ水(後編)

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私は、自分の親指を手の中でギュッと握った。 「両親に気付いてほしくてやったことだから、家では隠すようなことしてなかったんすけど……学校のことは考えてなくて。ちょうど夏服に移行する時期だったから、隠すために包帯なんか巻いて大袈裟になっちゃった。沙彩ちゃん心配してくれたのに、その時は言えなくて……ごめんなさい」 謝る白雪さんに、私は首を横に振る。 そして、1ヶ月前のことを思い出した。 金曜の彼とのことで、一度だけ考えたことがある。 朝起きて、洗面台に置いてあった眉剃り用の小さな剃刀を眺めて―― あの人と会わなくなった今、私が痛いって、生きてるって実感を得られることはもう……無い。 目の前の剃刀を、自分でも血が通っているのか不安になるくらいの白い腕に当てて――実行する勇気もないのにそんなことを考えた。 頭の中で想像して、想像しただけで終わってしまったけれど。 どうかしてると思う。 けどあの時は、そうは思わなかった。 それほど落ちていたんだと思う。
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