ソーダ水(後編)

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  ピエロだった。 白雪さんも、私も。 ペイントで描いた笑顔の仮面をつけて、その下では全然笑ってなんかいなかった。 白雪さんは言う。 私、変わったって。 「沙彩ちゃん……」 何も言えないから、私は白雪さんの手を両手で包み込んだ。 白雪さんみたいに抱き締められたらいいのに。 もっと、ありがとうが伝わるのに。 自分の羞恥心が邪魔して、私は自分のこの行動だけで視線を泳がせる。 「沙彩ちゃん」 「う、ん?」 「抱き締めてもいいっすか」 「っはい?」 「うわ……なんか百合っぽかったっすね、今の発言」 ゆり? 「いいかな」 今更照れる白雪さんに、私はもっと照れた。 「う、うん。どうぞ」 握っていた手を離して、私はどうしていればいいのかと悩む。 こう?と、ぎこちなく両手を広げて視線を送ると、白雪さんの目が潤んで見えた。 ――え。 「ニヒッ」 「白、」 「沙彩ちゃん可愛すぎっ」 「つぷ」 白雪さんが飛び付いてきて、私の息が一瞬止まる。 肩に手を添えると、気のせい? 微かに震えている気がした。 私はおずおずと白雪さんの背中に手を回す。
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