カレンダー(後編)

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今から切ろうとしていたジャガイモを一旦まな板の上に置いて、体の前で手を組んでその先の言葉を待つ。 「……もう大丈夫なの? 体」 「え?」 もっといろいろ言われるんだと覚悟していたのに、佐々さんの口調は柔らかくなった。 「熱……下がりました」 「長引かなくてよかったね」 佐々さんの言葉にコクリと頷く。 組んだ腕はそのまま、カウンターに肘を着く佐々さんは、 「何が出来るの?」 と、まだ何も始まっていない鍋の中を見つめながら聞いてきた。 「あ、カレーが――」 「カレーか……。そういえば、最近食べてない」 「はい……出来る予定、です」 「何か手伝う?」 「あ、いや……駄目、です。これは恩返しなので」 「……鶴が機を織る感じの」 つる? 「鶴の恩返し」 「っあぁ、それです。だから佐々さんは、ソファーで休んでてください」 あちらへ、の手をつけてリビングへ促すものの、佐々さんはそこから動こうとしない。 「見てる」 「見てる、ですか?」 「することないし」 あくびをする彼。 やりにくいとは言えない。
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