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――ブクッ、ブク
大きな鍋でぐらぐら沸騰するお湯。
「フー……」
静かに鼻で深呼吸すると、切った野菜を手にそれをじっと見つめる。
「……」
佐々さんは、そんな私をじぃっと見つめた。
「……で?」
「はい」
「おたくはさっきから何がしたいの」
「はい」
「はいって……」
簡単な料理なら私にでも出来る。
これでも1人暮らしをしているのだから、野菜を鍋で煮ることだってもう何度もしてきた。
でも……。
――ブクッ、ブクッブク
この行程が、大の苦手。
沸点をとうに超えたお湯と揺れる鍋が、私を焦らせる。
鍋の中を見ていると、それは地獄のマグマの様で、今にも罪人の叫び声が聞こえてきそう。
地獄に行ったこともなければ、そこにマグマがあるのかも分からないけれど。
――ブクッ、ブクッ
ま、待って。
今、今入れるから。
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