カレンダー(後編)

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今までのあれはなんだったの。 「おたくさ、もっと怖いこと経験してきたんでしょ? あれの何が怖いのよ」 ……確かに。 心臓の手術に比べれば、こんなの……。 少し前まで怖がっていた自分が可笑しくて、ふっと笑みがこぼれる。 「ね。僕も見てて笑いそうになった」 さっきの場面を思い出しているのか、表情を変えずに床を見つめる佐々さんは、口に拳を当てて無表情でそう呟く。 別に、笑ってくれればいいのに。 チロッと佐々さんに視線を送って、私は静かに手を合わせた。 いただきます。 「うん……やっぱり久しぶりに食べたら美味しいな、カレー」 久しぶりに食べたから、ですか。 「野々原さんが作ったからかな」 「……」 「美味い」 私はモクモクと口を動かしながら、時々佐々さんを一瞥すると、さっき彼が言っていた言葉を思い出す。 離れすぎるから、怖い。 近づいて、優しくすれば跳ねなかった。 じゃあ……柴田さんに笑顔で接してみれば、何か変わるのかな。 今までの私は、話し掛けてこないで、と態度に出していたのかもしれない。
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