イタいの(後編)

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「この隠れ泣き虫」 「ふ――」 “泣きたいと思って”なんて、言っていいの? どうしてそんなことが言えるんだろう。 言ってくれるんだろう。 いっそのこと、私のこと好きですか?って問いたいくらい。 ……好きですか。 違いますよね。 私だって――。 「あ……ちょっと待った」 だらんと両手を体の横につけて、はらはら涙をこぼしながら佐々さんを見上げる。 「泣けとは言ったけど、外で泣かれちゃ僕の立場が危ういから。ほら、犬の散歩してる叔父さんに変な目で見られてる」 泣けと言われて子供のように泣きじゃくることは出来ないけれど、今私が一番探していた “泣いていい” その言葉に、視界はずっと涙でぼやけた。 流しっぱなしでいると、背後を通り過ぎる人の気配を感じた。 俯いた視界にリードを付けられた子犬が現れると、見上げてくる丸い瞳と目が合った。 私はやっと涙を拭うと、 「……?」 佐々さんに腕を引かれる。 「え……」 特別だよ、と彼は、関係者以外入ってはいけないという扉を開いて、私の腕を掴んだまま中へと入った。
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