イタいの(後編)

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――あぁ。 流れる雲を追いながら、スンと鼻を啜って気付いた。 そっか……。 気分が落ち込んだ時、前向きな気持ちになれた時、いつでも空はそこにあって、いつの時も空を見上げた。 あそこには、あそこにはお母さんがいるんだ。 「ヒク……」 直接は見たことがないけれど、幼い頃から何度も父と見ては笑ってお話をした、アルバム・写真の中で笑う母の顔。 忘れたことのないその明るい笑顔を頭に浮かべれば、不思議と空が笑っている気がしてくる。 だから安心する。 手を伸ばしたくなる。 もっと見てたいような、そんな気持ちになる。 そっと目を閉じて、深く深呼吸をする。 ふと、額に柔らかい感触。 目を開けると、空と私の間に、佐々さんの顔。 「……泣きやんだ?」
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