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一通り話終えると、沈黙。
……いつから“こう”なったんだっけ。
人に、自分から口を開いて話をするなんて。
気付くと変化が起きている。
はじまりはこの屋上、この人がこのベンチに座っていて、あの日から私の世界は変わり始めた。
佐々さんの前で笑顔を作ったのは、いつが最後――。
「……」
会社帰りの車が増える時間、エンジン音が途切れ、青を知らせる歩行者信号の電子音が聞こえてきた。
やがてそれが止むと、せっかちなクラクションの音がして、再び車が走り出す。
「へぇ……」
ベンチの背もたれに乗せていた頭を正面に戻しながら、佐々さんが口を開いた。
「僕にイラついた、と」
「……その言い方だと、語弊があります」
人の優しさってものが、なんだかよく分からなくなったんだもの。
「間違ってないだろ」
「…………すみません。本当に、自分でもよく分からなくて。気持ち悪いんです……消化不良を起こしたような……」
――ブロロロロ
「ねぇ、それって僕のこと――」
「え?」
トラックのエンジン音で聞き取れなかった声を、私はすぐに聞き返す。
けれど。
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