イタいの(後編)

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フン……と、鼻から息を吐いた佐々さんは、 「ここで僕が学校まで行って、その子を叱ることも出来るわけだけど……」 と、私の顔色を伺ってくる。 「駄目ですそんなの……」 「うん。……ほら、前に言ったよね。黒板の内容を写すだけが勉強じゃないって。野々原さん、ちゃんと学べてるみたいだね……」 そう、見えるかな。 ちゃんと学べてるかな。 それは、正解なのかな。 「柴田さんに……私の言葉は届かないんだと思います」 「え、そう? その子の態度からして、十分届いてると思うけど。……なら、それが答えだ?」 答えかと聞かれれば、違う気がする。 「……」 「……難しいね」 「佐々さんは、佐々さんもそうでしたか?」 「僕は……そうだな。僕も最近まで悩んでた。人間ってのは……どうしてこんなにも難しいんだろうね」 「……。ですね」  
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