イタいの(後編)

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  図書館へと続くスロープを昇り終えると、緑の芝の上を歩く。 図書館の敷地に植えられた木々も、赤と黄色のコントラストで。 足元に1枚2枚と落ちている葉を見つけると、下を向いて歩いていることを自覚する。 空を見たくてここまで来たのに……俯いてばかり。 顔を上げて自動扉の前に立つ。 開かない扉に違和感を覚えるより先に、いつか見た張り紙が貼られていて気が付いた。 そっか、今がちょうど図書の整理期間なんだ……。 図書の整理期間中、屋上に昇るのはおあずけ。 口をヘの字に鼻から息を吐くと、来た道を引き返す。 図書館の裏手に回り、駐車場を見つめた時。 「――あ」 どこからか聞こえた声。 私は足を止める。 …………嘘。 本当は、声がする前からその人の姿は私の視界に映っていた。 気付いてないフリしてたのに……。
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