霞み想-カスミソウ-(前編)

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ずっと背中しか見えていなかったから気付かなかったけど、佐々さんと話をしているのは、さっき屋上から眺めていたあの女の人だった。 凄い偶然。 「ほんとに? 凄い、凄いよ」 意識を向けると、途端に聞こえる話し声。 女の人は、ふわっと笑ってこちらに向けていた顔を佐々さんに戻すと、私からは表情が見えなくなる。 「ゆっきー、凄くない? 凄いよねっ」 ゆ…………。 ゆ゛? 「凄い、凄い」 「うわぁ。相変わらずの棒読み」 「や……本当に凄いよ。これでもびっくりしてますから」 「本当かなぁ」 遠くからだと、図書館で働く人・利用する人に見えていたのに。 今は全然、そうは見えない。 あの女の人、佐々さんの知り合い? そうだとしたら、本当に凄い偶然だ。
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