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――
「はい?」
「きっとないけど。いや……絶対ないけど」
「フフ。何よ」
「もう暗いから。気を付けて」
「……貶しておいて優しくしないでよね」
佐々さんが、女の人を気遣ってる……。
ヒラヒラと佐々さんに手を振って、“美穂さん”は私に微笑む。
美穂さんの肩に乗ったストレートの髪が落ちる時、この静かな館内では、サラリと音が聞こえそう。
それくらい、艶のある綺麗な髪。
「またね」
「は、はい……」
返事はしたものの。
……またね?
横を通り過ぎた優しい香りが、私の胸をきゅっと締め付ける。
「お――」
また……って。
「――で」
「おたくも帰るの?」
――ハッ
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