霞み想-カスミソウ-(前編)

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―― 「はい?」 「きっとないけど。いや……絶対ないけど」 「フフ。何よ」 「もう暗いから。気を付けて」 「……貶しておいて優しくしないでよね」 佐々さんが、女の人を気遣ってる……。 ヒラヒラと佐々さんに手を振って、“美穂さん”は私に微笑む。 美穂さんの肩に乗ったストレートの髪が落ちる時、この静かな館内では、サラリと音が聞こえそう。 それくらい、艶のある綺麗な髪。 「またね」 「は、はい……」 返事はしたものの。 ……またね? 横を通り過ぎた優しい香りが、私の胸をきゅっと締め付ける。 「お――」 また……って。 「――で」 「おたくも帰るの?」 ――ハッ
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