霞み想-カスミソウ-(前編)

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「え?」 いつの間にか側まで来ていた佐々さんの声で、美穂さんの後ろ姿から目を離す。 「あ、はい。帰ります」 “ところで佐々さん、あの人誰ですか?” パクパクと、金魚のように空気を噛んだ。 「僕ももうあがるから、送る」 「…………や? だ、大丈夫ですよ」 「え。なに今更遠慮してんのよ……」 「その、今日は用事があって」 「今日も? ……最近忙しいんですね」 「ハハ……」 「なら、気を付けて」 “暗いから。気を付けて” 「……はい」 佐々さんは、優しい。  
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