霞み想-カスミソウ-(前編)

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「まだ全然、制服を脱いだ自分なんて想像出来ないっすけど。一緒に頑張ろうねっ」 「うん」 「佐々さんのこと考えるのはいいけど、受験落ちたら嫌っすよ?」 「う、うん」 ……そうだ。万が一不合格になっても困るのは自分だけ、なんて思っちゃ駄目なのか。 大変だ……、と内心焦る私の耳に、チャイムの音が聞こえた。 白雪さんは、 「また後でね」 と歯を見せて笑うと、自分の席へと戻っていく。 とりあえず勉強、勉強するのみ、と私は授業の準備を始めた。 ――ヴー、ヴー 「?」 スカートのポケットの中、単調なリズムで震え出す携帯。 誰?と、平日のこの時間から連絡をしてくる相手を冷静に考えながら、先生が来ていないことを確認して携帯を取り出す。 机の下で画面を開くと、“コンビニ”の文字が表示されていた。 バイト先の店長からだ。 だとすると、メールの内容は安易に想像出来る。 夕勤の2人が欠勤になりました。 申し訳ないのですが、今日はドライ発注があるのでお願いしたいです。 学校が終わったら、連絡を頂けると助かります。  
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