霞み想-カスミソウ-(前編)

2/40
前へ
/40ページ
次へ
  「お」 「……」 「うん、素敵じゃない」 「……何度も……失敗したけど」 定期検診のため病院に訪れた私は、おばさんに早々、マニキュアを塗っていることがバレた。 「なにー? どんな心境の変化があったのかなぁ? 私がすすめた時は、聞く耳持たずだったのに」 「……内緒」 「へー。ほー?」 「い、いいからおばさん……。早く診てください」 「はーい。フフ」 何がそんなに面白いんだろう。 私が病室を出るまで、おばさんはずっとニンマリしていた。 去り際に聞いてみると、 「面白いというより、ハッピーな気分?」 机の上のカルテを整理するおばさんは、そう答えた。 私の疑問は解決されなかったけれど、まぁいいや、と病院を出るとその足で図書館へと向かった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加