霞み想-カスミソウ-(前編)

5/40
前へ
/40ページ
次へ
「そう……。上手くいくといいね」 え? 佐々さんは一瞬口元を緩めると、私の頭を軽く撫でた。 「どんな人?」 「え?」 「相手」 え……。違うんだけど……な。 そうじゃなくて……そうじゃ……。 私に好きな人が出来たら、“上手くいくといいね”って、思ってくれるんだ。 優しいの……。 でも。 「ハハ……違いますよ」 「違うの? ……なんだ、好きな人が出来たのかと思った」 「出来たら教えてます」 「嘘。絶対隠すよ」 「嘘じゃないです……」 可笑しいな、上手く笑えないや。 「だって、好きな人が出来たら――」 佐々さんとの関係は、終わらせないといけないでしょう? 言葉にしないで真っ直ぐ視線を向けると、佐々さんはその先の言葉を悟ったようで。 「あぁ……そうだね」 と、静かに言った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加