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「ぶ」
「あと何回、この面白い顔が見れるかな」
いつもの如く佐々さんに頬を挟まれて、私は視線を外してされるがまま。
最初は、変な顔を見られるのが恥ずかしかったけれど、今ではすっかり慣れてしまった。
「……ほら。遊んでないで、行くよ」
「……」
遊んでるのは佐々さんじゃない。
屋上の扉を開ける佐々さんの背中を見つめながら、本を胸に抱いて笑った。
「――あ」
1日2日、日付が変わって、毎日屋上に来ては街を見下ろす私は、例の女の人をよく見つけるようになった。
一度接触すると、こうも目に付くもんなんだな。
「佐々さん、あの人見たこと――」
この道を通る人だから、佐々さんも見掛けたことがあるんじゃないか、と後ろを振り向いて聞くけれど。
「……あ」
ベンチに佐々さんの姿はない。
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