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そうだ、今日はいないんだっけ。
屋上に来る前、受付のカウンターの中から佐々さんに呼び止められた。
そして、『残業』と、ただ一言。
別に約束をしているわけでもないのに、私を見つけて声を掛けてくれて、それを教えてくれたことが嬉しい。
「今日は走ってないんだ」
向こうから歩いてくる女の人を目で追っていると、図書館の敷地に入ったところで見えなくなった。
図書館?
常連さんだったら、佐々さんも見たことあるかな。
「どんな本を読むんだろう」
佐々さんがいないから、独り言が増える。
ああいう人となら、佐々さんは本のことで盛り上がれたりするかな……。
柵の前に立って振り向けば、いつも本を読みながらそこにいる人。
空のベンチを見つめながら、近付いて、ポスンと腰を下ろす。
「……」
立派な庭園が、今は心細くさせるというか……。
昨日まで元気に咲いていた花壇のパンジーも、少し萎れて見えるよ。
「佐々さんが来ないのが寂しいの……?」
誰もいない屋上で花に話し掛けている自分を想像して、空笑いする。
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