霞み想-カスミソウ-(前編)

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えーと……。 館内のどこにいるかも分からない佐々さんを、探しながら歩く。 広々とした奥行きのあるフロアに、ズラリと並んだ本棚。 棚と棚の間を1つ1つ見て回っていると。 ――あ。 利用者の人と話をしている、佐々さんの姿を見つける。 話が終わるまで待とうと、声を掛けずに少し離れたところで待つことにした。 ――タン……タン…… 本棚に手を伸ばして、本の背に指を引っ掛けて引き出しては戻す。 それを意味もなく繰り返しながら、まだかなぁ、と佐々さんに視線を投げると。 ――パチ タイミング良く、佐々さんと目が合った。 「――」 佐々さんは私から目を離さないで、目の前の人と話を続ける。 ……? 不思議に思って見ていると、ふいに利用者の人がこちらを振り返った。 ――あっ。
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