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『誰の世界でもない、沙彩ちゃんなんすよ』
「っ……」
『それなのに、誰の目が気になるっていうんすか。その世界を作ってるのは、自分だよっ』
なんでか分からないけど。
白雪さんの言葉に目頭が熱くなって、玄関扉の磨りガラスが歪んで見える。
『コホン。あー自分、青春してるなー。……ヒヒ。では、まとめます』
「っう、うん」
『私が言えることは2つ。1つは――そんな近くにいたら、誰だって情が湧くもんすよ。
嫌いな人でも、毎日顔を合わせてたら慣れるもんなんす。ましてや沙彩ちゃんと佐々さんは、(仮)だとしても恋人同士なんすから、好きになっても可笑しくない。人間、そんなもんなんすよ』
「うん」
『それともう1つ。沙彩ちゃんはいつも否定してたけど、いっっっつも、佐々さんのこと考えてたよね?』
「……ん……いっつも」
『毎っ日、沙彩ちゃんの中に佐々さんがいたんすよ。誰かのことを考えるってことは、その瞬間、誰かを想ってるってことと同質だと思うんだ、私は。
柴田さんのことだって、そのまま無視して卒業だって出来たのに、考えることを止めなかったよね?』
「っ――うん……」
『沙彩ちゃんの気持ちは、沙彩ちゃんにしか分からないんだよ。このまま無視するのって、凄く辛いよ』
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