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『……小説書いてるとね、こんな声を見掛ける。
“現実だったらこんなに立ち向かっていけないから”
“すんなり好きだって認めたけど、一体どこを好きになったの”
……でも、思うんだよ。リアルは二次元よりファンタジーだって。現実、何気ないことで人を好きになっちゃったりするし、理由なんて後付けにすぎなかったりするもん。
その点小説は大変っすよ。読み手を主人公に感情移入させるには、相手のかっこいいとこたくさん見せて、読者さんにも恋をしてもらわなくちゃいけないんだ』
「うん」
『とまぁ、話が脱線するけど……。沙彩ちゃんは興味深いっていうか、その考え方とか聞いてると、インスピレーションが刺激されるんす。
だから沙彩ちゃんはそのまま、人がどうとか、人にどう思われるとか考えないで、沙彩ちゃん自身がどうしたいのか考えてほしい。
沙彩ちゃんはどうしたい? このままでいい?
外から見たらね、今そうなってる沙彩ちゃんを見てびっくりしてるんすよ。そうさせてる人がいるんだなって、嬉しくなる。
柴田さんの時みたいなのはお断りっすけど、そういうのなら本当……大歓迎』
言葉が出ない。
私は唇をんっと噛み締めて、コクンと大きく頷く。
『一方的に話しちゃったけど、私が言いたいことは言ったっ。あとは沙彩ちゃんが応えるんだよ、自分にね?』
また、頷く。
白雪さんには見えないのに。
『……泣いてるの?』
今度は首を横に振るけど、これじゃ伝わらない。
「ううん」
『ヒヒッ。なら安心っす。じゃあ……またね?』
「……ありがとう、白雪さん」
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