霜焼け(前編)

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  「こんばんは……」 「……どうも」 屋上に行くと、この寒い中1人街を眺める佐々さんがいた。 白雪さんを相手にするよりももっと大変なのは――この人。 「寒くないんですか?」 佐々さんはカーディガンしか羽織っておらず、寒色系の水色がより寒々しい。 「野々原さんより体温高いから」 「それでももう、12月に入ったんですけどね……」 柵の前に立っている佐々さんの傍まで行く。 右足、左足……。 心の中でそう言いながら歩かないと、こっちに向けたままでいる佐々さんの視線が気になって、たった数歩歩くのにも緊張して可笑しくなりそうだ。 「あれ、1人?」 「?」 「まだ居るようなら、2人まとめて送ろうと思ってたんだけど」 「え……白雪さん、帰っちゃいました」 あなたを好きだという友を気遣ってくれて。
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