霜焼け(前編)

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「いらっしゃいませー」 カゴを整理していた女性店員さんの挨拶に、 「いらっしゃいましたー」 と呑気な声で返す佐々さん。 店員さんにも聞こえたのか、何故か私がニッコリ笑顔を向けられる。 お店に入ると私がカートを引いて、前を歩く佐々さんは店内を物色し始める。 すぐにどこかへ消えてしまう佐々さんを見つけたかと思えば、彼は立ち止まって何やら真剣に商品棚を見つめていた。 視線の先にある商品を見て、私はギョッとする。 屋上を降りる際に言っていた佐々さんの『闇鍋』発言を思い出したからだ。 「野々原さん。これ、可愛くない?」 「あー……ハハ。その隣は可愛いですね」 「え……趣味悪」 さ、佐々さんに言われた。 お菓子売り場で見つけた四角い箱には、私が使っている手提げカバンのキャラクターと似たようなイラストが描かれている。 か、可愛い。 対象年齢3歳、キャラクター指人形にラムネが1個付いて、298円。 この可愛さなら、と箱に手を伸ばそうとしたら、周りの子供達にじーっと凝視されていることに気付く。 「……ヘヘ」
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