118人が本棚に入れています
本棚に追加
「聞きたいことはあるけど、先にどうして泣いてるのか教えてくれる」
追い掛けて、来てくれた。
「……変な輩でもいた?」
辺りを見回す佐々さんは呼吸も落ち着いて、最後に深く息を吐く。
「……」
「ん?」
少し首を傾げて私を見下ろす彼の顔は、目に溜まっている涙でボヤけた。
佐々さんの手は冷たいのに、掴まれた肩に熱が集る。
そっと手が離れると、ポロ、と一粒涙が流れた。
いつまでも答えないでいる私に、佐々さんは声のトーンを下げて言った。
「……本当に何かされでもした?」
彼の目を見て微かに首を振ると、すぐにまた大きく横に振る。
「そう……。なら、どうしたの?」
その優しい声に涙が込み上げて、私は顔を歪めると、酸っぱい物でも食べたような顔になる。
最初のコメントを投稿しよう!