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「こんな時間に1人で外でて……。帰るなら僕も歩いて送ったのに」
「っ……う……」
夜に1人で歩くのに、誰かに注意されたことなんてなかった。
佐々さん、好きだよ。
そう思うと、ぽろぽろ、ぽろぽろ、涙の粒が目からこぼれた。
「もう……焦ったよ」
「っ……?」
浅く息を吐きながら、佐々さんが何か呟いた。
もさもさの頭をポリポリ掻いて俯くと、前髪が影を作って目元が隠れる。
「何度も言うけど、さ……。おたくには前科があるだろ」
「ヒク……」
「僕みたいな無愛想な人間でも、避けられればこたえるんだよ……」
「すみま、せん」
「でも……それでも急に帰るなんてことなかったのに、どうして? ……今泣いてることと、何か関係あるの」
「ヒッ……佐々さんは」
手提げカバンをキュッと握ってしゃくりあげながら、胸の中にある言葉を1つ1つ紡ぐ。
「私が、佐々さんの目の前からいなくなったら……佐々さんは、走ってきてくれるんですか」
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