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私の方に体を向けて肘枕をして横になる佐々さんは、布団を肩まで掛けてくれる。
空気が入らないように首の隙間まで埋めてくれるけれど、自分の肩は出てしまっていた。
「佐々さん……?」
斜め上の顔を見上げると、佐々さんは目を閉じていて、子供を寝かしつけるように布団の上からぽんぽんと叩く。
「本当はいろいろ考えてたけど……今日はこうして、足も腕も絡めて眠りたいなと思って」
横になって喋る佐々さんの、寝る前の声。
鼓膜に優しく響いて、いつもより少し高く聞こえた。
「私、抱き枕みたいですね」
「駄目? ……おたくが寝にくいかな」
そんなことない、と私が首を横に振ると、佐々さんはすっと目を開けて私を見下ろす。
「おやすみのキス、しようか」
おや、おやすみのキス?
「っと……」
思わずつっと視線を下げると、佐々さんがゆっくり頭を浮かせる。
それを上目づかいで見て、目を伏せると、唇に優しく熱が触れた。
「ふ――」
深いところで絡められる熱。
いつの間にか佐々さんの胸の中にいる私は、ぎゅっと、彼の服を握り締めた。
お互いの酸素を交換するようなキス。
唇が離れると、自分の呼吸が乱れていることに気付いた私は顔を熱くする。
することはしてるのにキスが恥ずかしいなんて、可笑しいの。
「ごめん……」
止まらなくなるね、と額に落とされるキス。
「好きな子相手だと、僕もまだまだ青二才だ……」
“好きな子”……だって。
「おやすみ」
「おやすみなさい……」
佐々さんの呼吸がすぐ近くに聞こえる。
あったかい……。
私の脇腹、布団の上に置かれた腕の重みに落ち着く。
うん……ここにいるって感じがする。
「……」
佐々さん、寝たかな。
少し躊躇って、佐々さんの胸に頭を擦り寄せてみる。
トクン、トクン
佐々さんの音が子守唄になって、ウトウト、私の眠気を誘った。
「スゥ――」
「……――フ」
これ以上ない幸せの中
意識を手放す瞬間
優しい手に、頭を撫でられた気がした。
おわり
【ココロネ+へつづく】
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