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「大きいのと、吠えるのは駄目」
「大きい猫は?」
「それは、一匹欲しい……」
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「ふわ~ぁ」
先輩が、大きく伸びをする。
「……暇じゃないですか?」
「ん……そうでもないよ」
そうは言いつつも、目をこすっては、周囲を見渡している。
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「……くぅ……う~ん」
「……」
寝てる。
しかも気持ちよさそうに。
なんとなく周囲を見渡すが、人気はない。
「……なんて不用心なんだ」
ため息をつきつつ椅子から立ち上がる。
座りっぱなしで腰が痛かった。
「……しかし、見知っているとはいえ、異性の前でよく寝れるものだ」
アイスを食べ、草むらに寝ころび、すやすやと寝息を立てるお嬢様。
「うぅぅ……暑い……」
そりゃそうでしょう。
一応、座る位置をかえて僕の日影になるようにしたり、日焼けはさせないようにと、むき出しの足には布をかけたりはしたが、基本的な日よけにはなっていない。
オレンジジュースを鞄からとりだし、ストローを差し込んだところで、やたらと寝苦しそうな先輩の表情が目に付いた。
柔らかそうな唇が、艶めかしく動いている。
「先輩、大丈夫ですか?」
スケッチブックで顔を仰ぎながら、声をかける。
「こんなところで寝てると、風はひきませんけど、夜寝れなくなりますよ」
「……ん?」
ごろごろと、先輩がうっすら目を開く。
「はれ? もうお風呂れすか?」
「……どういう生活を送ってるんですか」
むっくりと上半身を起こすと、先輩は不思議そうに辺りを見渡している。
「暑い……」
「これ、飲みます?」
オレンジジュースをさしだす。
「……うん」
いまいち安定しない両手でパックを受け取り、先輩が美味しそうに果汁を飲む。
「……ふぅ」
「どうです?」
「ありがとう」
人心地ついた先輩がにこりと微笑む。
「飲んだからもう少し寝る」
「は?」
こちらの返答など待たず、パタンと先輩は倒れてしまった。
「……草のいい匂い」
「……先輩、本当に良いんですか?」
だいじょーぶらよ……一日3錠までは楽勝やもん」
もう寝てる?
顔に耳を近づけると、彼女は、すぅすぅ、と穏やかな寝息をたてていた。
「……」
呆気。
「そう言えば、寝るのが好きだって言ってたな」
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