校内コンクール銀賞

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 「……」  「もしくはオセロ」  「まったく……」  吹き出す先輩。  とりあえず命はとりとめたと、思わず胸をなで下ろしてしまう。  「ふぅ~。そうやって、どんな時でもほのぼのしてるから、人が寄ってくるんだろうねぇ」  怒りながら笑うという、器用な表情で、先輩は僕の胸をつついた。  「ほのぼの?」  「なんていうのか、捨て犬とか捨て猫とか、来るもの拒まずみたいな感じ。ずるいよ」  クルリ、とスカートをひらめかせて一回転すると、彼女は路地の奥に歩きだした。  「なんだこうだ言える立場じゃないけどさ、もう少し女性の動きには気を遣ったほうがいいよ」  見返って、お姉さんぶって彼女は語る。  「いつもああなの?」  「……ああ、って?」  汗と頬をかきながら、空いた手で鞄を拾いあげる。  「女の子に詰め寄られると、あんな動けなくなるくらい上がっちゃうの?」  「……あ、うん……それは、ひどく説明が難しいかも」  動けなかったのではなく、まさか、自分でも期待してしまったとは言えまい。  「ふと、顔を上げると、先輩が指輪でも見るような仕草で手の甲を見つめていた。  「? なにやってるんです?」  「ちょっとね。面白いこと思いだしたから」  いたずらっ子のように、彼女は微笑む。  「手の甲へのキスは主君への忠誠の証。手の平へのキスは……愛の誓い、ってね」  自分の手に口づけをしながら、先輩は無邪気に目を細めた。  「さ、勉強しましょ、先生♪」  僕はやたらと熱を帯びた頬をひきつらせながら、全身から汗が噴きでてくるのを感じた。    先輩の部屋が、美術講の教室や先生の部屋のある母屋とは別にあることは知っていた。  さすがに、妹との生活で女の部屋というシチュエーションにも慣れてはいたが、先輩の部屋は別格である。  僕も、足を踏み入れるのは初めてだった。  ……五体満足に帰れるのだろうか?  ……そもそも、部屋なのだろうか?  ・  ・  ・  ・  ・  部屋の隅にはラムネ瓶やら描きかけの絵が置いてある以外は、多分、ありきたりな女の子の部屋だったことに驚いた。  窓の外には適度な広さの林が広がっていて、遠い蝉の声と、心地よいそよ風が、カーテンを揺らして部屋をぬけてゆく気がした。    
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