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シャナンは穏やかな顔をして永遠の眠りについたはるやに、心から礼を言った。
カナーンを抱きかかえたシャナンは、引きずるように歩いて教会を出ようとしたのだが、二、三歩進んだところで、よろけて転びそうになった。
そのとき、支えていたカナーンの体が急に軽くなった。
「ナイト役は……私のほうが良い」
「カナーン!」
まだよろついてはいたが、カナーンはその足でしっかりと立ち、シャナンを抱き寄せた。
「無様だな。はるやに助けられた」
「……はるやは、もう……」
「そうか」
カナーンは横たわって動かないはるやの方をちらと見て、俯いた。
「はるやから、黒い影が飛び去ったの。もしかして、バートリは生き延びたのかもしれない」
それを聞くと、カナーンは悔しそうに唇をかみ締めた。
「でも、そんなことはいいの。こうして生きているのだから」
「心配させた」
「そうよ。『生きて』なんて、本当にもう、最期の言葉みたいなことを言うのだもの……」
「違う、聞こえなかったのか? 『大丈夫だ。生きている』と言ったのだ」
そう言って笑ったカナーンだったが、足はふらつき、まだ十分な状態ではないのは明らかだった。
「早く極上の乙女を調達しないとならないわね。幸いここは女子高だもの」
「……それよりもっと力のつく方法がある」
カナーンはおもむろにシャナンの顎を引き、唇を奪った。それは、むさぼるような濃厚なキスだった。
「……んん!」
シャナンがいくら手で押しのけるように抵抗しても、カナーンに押さえ込まれて逃れられなかった。
どこにそんな力が残っているのか。
シャナンの息が荒くなり、頬が高潮して立っていられなくなった頃、カナーンは突然体を離した。
「私も精がつくが、シャナンも元気になったであろう?」
口の端を上げて笑うカナーンが、シャナンには腹立たしかった。
こんなに心配をかけておいて、悪ふざけをするなんて。
体が火照っているのに、急に突き放されて肩透かしを食らったような、ちょっと惜しいような気がしたシャナンは、恥じらい交じりに嬉しそうな顔を無理に怒らせて「カナーン!」と叫び、カナーンの胸の辺りを手で小突いた。
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