第3話

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 シャナンは穏やかな顔をして永遠の眠りについたはるやに、心から礼を言った。  カナーンを抱きかかえたシャナンは、引きずるように歩いて教会を出ようとしたのだが、二、三歩進んだところで、よろけて転びそうになった。  そのとき、支えていたカナーンの体が急に軽くなった。 「ナイト役は……私のほうが良い」 「カナーン!」  まだよろついてはいたが、カナーンはその足でしっかりと立ち、シャナンを抱き寄せた。 「無様だな。はるやに助けられた」 「……はるやは、もう……」 「そうか」  カナーンは横たわって動かないはるやの方をちらと見て、俯いた。 「はるやから、黒い影が飛び去ったの。もしかして、バートリは生き延びたのかもしれない」  それを聞くと、カナーンは悔しそうに唇をかみ締めた。 「でも、そんなことはいいの。こうして生きているのだから」 「心配させた」 「そうよ。『生きて』なんて、本当にもう、最期の言葉みたいなことを言うのだもの……」 「違う、聞こえなかったのか? 『大丈夫だ。生きている』と言ったのだ」  そう言って笑ったカナーンだったが、足はふらつき、まだ十分な状態ではないのは明らかだった。 「早く極上の乙女を調達しないとならないわね。幸いここは女子高だもの」 「……それよりもっと力のつく方法がある」  カナーンはおもむろにシャナンの顎を引き、唇を奪った。それは、むさぼるような濃厚なキスだった。 「……んん!」  シャナンがいくら手で押しのけるように抵抗しても、カナーンに押さえ込まれて逃れられなかった。  どこにそんな力が残っているのか。  シャナンの息が荒くなり、頬が高潮して立っていられなくなった頃、カナーンは突然体を離した。 「私も精がつくが、シャナンも元気になったであろう?」  口の端を上げて笑うカナーンが、シャナンには腹立たしかった。  こんなに心配をかけておいて、悪ふざけをするなんて。  体が火照っているのに、急に突き放されて肩透かしを食らったような、ちょっと惜しいような気がしたシャナンは、恥じらい交じりに嬉しそうな顔を無理に怒らせて「カナーン!」と叫び、カナーンの胸の辺りを手で小突いた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加